三十年以上前、フィンランドに行った。雑誌に原稿を書くための、取材旅行だった。季節は冬、十二月の、クリスマス前だった。まずヘルシンキに行き、そのあと国内線でイヴァロという空港に着いて、ガイドであるアリ君の出迎えを受けた。当時著名だったラリードライバーと同じ名前で、二十代後半の、シャイな感じがする若者だった。

彼の車がボルボで、わたしたちはさらに北のラップランド、イナリという小さな町を目指した。イナリには、有名な湖がある。だが真冬で、さらに北緯七十度近いので、完全に凍っていた。湖が凍るくらいだから、当然道路もアイスバーン状態だったが、アリ君のドライビングでボルボはかなりの高速を維持し、制御を失うことは一度もなかった。

イナリの湖畔にボルボを停めたアリ君は、突然、口笛を吹いた。何してるの?と聞くと、人差し指を口に当て、黙って、とささやいて、さらに口笛を吹き続けた。すると、湖の向こう側、地平線近くに、突然、緑色の光の帯が現れ、揺れ動きながら、近づいてきたり、遠ざかったりした。オーロラだった。アリ君によると、先住民族サーミの伝説で、オーロラは「犬の化身」らしい。

「だから、犬を呼ぶように口笛を吹くと、オーロラが来る」

わたしは、凍えそうだったが、その神秘的な光の帯を、ただ茫然と見続けた。揺れ動く光に、吸い込まれそうだった。

たぶん、というか、きっと、夜だったのだろうが、十二月のその時期、イナリでは、太陽が、出ない。明け方、東の空が三十分ほど薄明るくなり、周囲がぼんやりと見えるようになるが、あとはずっと夜だ。

イナリには一週間ほど滞在し、雪の森をスノーモービルで競争したり、サーミの集落に赴き、トナカイの橇(そり)に乗ったりした。

旅が終わり、空港で別れるとき、「実はぼくも日本でボルボに乗ってるんだ」と言ったら、アリ君は「ボルボは、弟みたいなものだよ」とうれしそうだった。

そのとき、雪の林から四頭のトナカイに引かれたサンタクロースが現れて、びっくりした。実はサンタクロース村というのが近くにあって、観光客サービスだ、アリ君がそう教えてくれた。だが、「サンタクロースは実在する」日本に戻ったら、子どもたちにそう言おうと思った。

雪道をボルボで走るとき、今でも、オーロラとサンタクロースが脳裏に浮かんでくる。


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